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部下の感情状態を把握することは、組織の生産性向上に有効か?

2016年03月31日
【LASSIC感情医工学研究所レポート】Vol.4

 

LASSICが鳥取環境大学、鳥取医療センターと共同で設立した感情医工学研究所では、感情解析技術を産業分野に活かし、企業理念である「『らしく』の実現をサポートする」ことを目指し、実用化のための研究を行っています。

精神・心療内科の分野では、気分状態に不安を抱える患者が年々増加し、こころを良好な状態に導くメンタルヘルスケアが注目されています。また、日本人の生産性が諸外国に比べて低いことが課題となっている中、アンガーマネジメントなどの感情コントロールは生産性を向上させる効果があると注目されています。

しかし実際に、感情と生産性の関連性を明らかにするような研究はあまり行われていないため、有意なデータが必要となっています。

前回のレポートでご紹介した実験では、不快な感情状態が生産性を低下させることを確認しました。

そこで今回は、「組織マネジメント」における生産性向上への活用を検討する手がかりとして、感情解析を、上長によるマネジメントに利用する実験を行いました。

 


前回のレポートはこちらから。

report3_panel

[らしくメディア|事例紹介]【感医研レポートVol.3】|不快な感情状態が生産性を低下させることを実証

 

研究背景

前回の実験では個人の生産性にスポットをあてましたが、ソフトウェア開発のプロジェクトにおいては個人の生産性だけでなく組織としての生産性に着目する必要があります。

感情医工学研究所では組織の生産性を以下の式で定義しています。

 

[組織の生産性=個人の生産性×組織のシステム]

 

組織のシステム例の例としては情報共有のしくみや配置の最適化、メンバーの組み合わせ、定例や面談等による個人への介入が挙げられます。

中でも個人への介入を効果的に行うには以下のような課題があると考えられます。

 ・メンバーの気持ちを汲む必要がある

 ・もっと早く声をかけるべきだった等、タイミングを逃すこともある

こまめな目配りには限界があるため、感情データを常時トラッキングすることで組織からの適切な介入に利用できないかと考え、感情データを用いた個人への介入実験を行いました。

 

実験の概要

実験は、感情状態をトラッキングした状態で2名の被験者で同じ作業を2回実施しました。

1回目の作業後に上長によるフィードバックを行い、その後2回目の作業を実施して、2回目の作業効率を測定しました。上長が感情状態を把握してフィードバックを行うケースと、感情状態を把握せずにフィードバック行うケースで場合分けし、フィードバック後の作業効率に違いが生じるかを検証しました。

また、最後に被験者と上長とにアンケートを実施し、主観評価を確認しました。

 

方法の詳細

(1)表情のトラッキング

インテル®の生体データを認識する技術「RealSense™」を搭載したカメラで被験者の顔を常時撮影し、表情をトラッキングしました。

表情トラッキングの様子

感情マネジメントシステム画面

 

(2)不快状態の判定

(1)の表情画像を、弊所が開発する「マルチモーダル感情分析システム」に入力し、7種類の表情(AngerContemptDisgustFearSadnessSurpriseJoy)と3つの感情(NegativePositiveNeutral)を計測しました。このうち、アメリカの心理学者ラッセルによるCore-Affectモデルを元に、「Anger」「Contempt」「Disgust」「Fear」「Sadness」を「不快な状態」と定義しました。

判定できる表情の種類

 

(3)上長によるフィードバックの実施

作業中の感情データのグラフを見ながら上長と振り返りを行う場合と、感情データなしで振り返りを行う場合の2パターンを実施しました。

感情データ可視化例

感情データのグラフ可視化例

 

実験の結果

■ 感情状態と作業効率
2名の被験者ともに、感情状態を用いたフィードバックを行ったほうが感情状態が悪化し、2回目の作業効率も低下する結果となりました。

■ アンケートによる主観評価
2名の被験者、上長ともに、感情状態を用いたフィードバックを行ったほうが良いとの結果が得られました。

 

考察

アンケート結果が良好であるにも関わらず、実作業では感情状態・作業効率ともに悪化していることについて、その原因と問題点を下記のように考察しました。

●実験前の出来事に影響を受けている
アンケートによると、被験者2名共に、実験前に不快な出来事があった。

●感情グラフの見せ方が適切でなかった
10枚程度のグラフ見せたため、特徴点の把握がしづらかった。

●上長のフィードバックスキルが適切でない
グラフから感情状態の特徴を把握し、フィードバックするためには練習が必要である。

●実験時間が短かった
感情状態は長い時間をかけて変化するものである。

●感情データを用いたフィードバックを他人から受けると感情状態が悪化するのではないか
対人以外(テキストや機械対話等)でフィードバックした場合にどうなるのか、検証する必要がある。

●その他の問題点
感情状態を他人に見られたくないのでは、という意見があった。

 

今後の課題

考察をもとに、今後の課題について以下のように設定し、さらなる研究を行っていきます。

●感情データを用いたフィードバック方法の確立
・感情データの見せ方の改善
・フィードバックのケース集め、上長の教育、フィードバックのためのヒントの自動生成

●対人以外での介入の検討
テキストによるメッセージ表示や、機械対話による介入の試行

●プライバシーへの配慮
同意書や、開示するデータの範囲を選択できる等の対策の実施

 

以上の結果は、2016311日に行われた、情報処理学会第78回全国大会にて発表しました。

 

今後もLASSIC感情医工学研究所の研究にご期待ください。

 


実験に使用した感情解析システムの詳細については、こちらの記事をご覧ください。

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[らしくメディア|事例紹介]【感医研レポートVol.1】
感情解析技術を利用した開発事例


Everestを応用して開発した「減煙支援システム」については、こちらの記事をご参照ください。

減煙支援システムimage

[らしくメディア|事例紹介]【感医研レポートVol.1】
機械対話に基づく感情遷移推定と「症状処方」への応用を発表


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