
2025年9月26日
ワーケーションで大人気のスペインのリモートワークの状況とは
記事の調査概要
調査方法:海外ライターの執筆/インターネット調査
調査対象:現地の声及び海外記事リサーチ
調査期間:2025年
2023年にデジタルノマドビザが導入されたスペインは、世界で最もリモートワークしやすい国の1つとして今ノマドの中で注目を浴びています。
※1 出典及び画像引用元:Global Digital Nomad Report 2024 (グローバル・シチズン・ソルーション)
「2024年グローバル・デジタル・ノマド・レポート」 (※1) で、スペインはデジタルノマドに一番お勧めの目的地になりました。
スペインが1位となった理由を簡単にまとめると、デジタルインフラが整備されていて、天候がよく、物価も手頃、観光や文化、美味しい食事も楽しめる、そこにノマドビザ制度ができたからです。
この記事では、ワーケーションで大人気のスペインのリモートワーク状況をご紹介します。
スペインはノマドビザを使ったワーケーションで人気
ノマドとは:ワーケーションとの違いは?
ノマドは特定の場所に縛られず場所を移動しながら働く働き方で、ワーケーションはリゾート地などで仕事と休暇を組み合わせる働き方です。 (※2)
ノマドは「場所の自由度」、ワーケーションは「仕事と休暇の組み合わせ」に重点が置かれています。
ノマドはフランス語で「遊牧民」を意味する言葉に由来する、場所を問わず移動しながら働くことを指しています。一方で、ワーケーションは旅行先で仕事をする行為そのものを指します。ノマドは生活様式そのものに近い概念ですが、ワーケーションは特定の働き方や休日の過ごし方として導入されることが多いです。
スペインの場合は、ノマドビザを使って、長期のワーケーションのようにワークライフバランスよく過ごすことができるという感じになります。
※2 出典:デジタルノマドとワーケーションという働き方(大塚商会)
なぜスペインがノマドに人気なのか?
まずはスペインが1位となったレポートから見てみましょう。
グローバル・デジタル・ノマド・レポート (※3)レポートをまとめたグローバル・シチズン・ソルーションズが考慮した要素は以下です。
・ビザ費用(申請費用や収入要件)
・ビザ利便性(期間、市民権取得への道筋など)
・生活の質(気候、治安、英語が通じるなど)
・経済(生活費、税金、コワーキングスペースの価格など)
・インデックスまたは世界知的所有権機関)
その結果、スペインは65カ国中、2024年にデジタルノマドが向かうべき最高の目的地に選ばれました。
スペインは、5つの要素のうち3つの要素でトップ10入りを果たして、総合ランキングで首位です。
ビザ利便性が最も高く1位、イノベーションで3位、生活の質で6位、ビザ費用は23位で、経済面は34位となっています。
2位は生活の質でトップのオランダです。続いて3位はノルウェーとなっています。
※3 出典:グローバル・デジタル・ノマド・レポート (グローバル・シチズンズ・ソルーション)

スペインがなぜ1位?
スペインが1位となった要素をレポートに合わせて見てみましょう。
1.デジタルノマドにとって不可欠な働く環境がある
・インターネットのスピードが速い
スペインはヨーロッパ屈指の5Gネットワークを提供しています。2024年半ばには、全人口の96%に5Gが普及していると報告されています。
・コワーキングスペースが充実している
マドリッドやバルセロナなどの大都市だけでなく、小都市や地方にも広がっています。
2.生活の質が高い
・スペインの医療制度は世界最高水準
・文化的な都市が多い
バルセロナ、マドリード、バレンシアなどの都市は、歴史、美術館、ナイトライフ、レジャーが融合していて、仕事とレクリエーションのバランスを求める人々にとって特に魅力的です。
・気候が温暖
スペインは年間を通して3000時間の日照時間のある晴天の多い国です。
地方によって大きく気候が異なりますが、スペインはほぼ全土、温帯に位置しており、西岸海洋性気候と地中海性気候が主な気候区分です。
・食事が美味しい
・西ヨーロッパの中では、住宅費・食費・交通費が比較的安価
ドイツ、フランス、オランダ、イギリスに比べて低く、ポルトガルよりは高いと言われています。
3. ビザの収入要件が低い
デジタルノマドビザにはほとんどの国が最低収入基準を設けています。
スペインは、2025年時点での月収の最低要件は、スペインの最低賃金の2倍に当たる2,763ユーロ(約443,000円)で、多くのヨーロッパ諸国より低く設定されています。(扶養家族なしの場合)
4. 優遇税制がある
フリーランサーや起業家にとって、年間60万ユーロまでの所得に対して非居住者として一律24%の税率で課税され、海外収入には税金がかからないという有利な税金制度となっています。(ベッカム法)
まとめると、スペインは、インターネットのスピードが速いこと、コワーキングスペースが充実してリモートで働きやすく、気候が温暖で、食事も美味しく、美しい街並みや文化が楽しめ、そして経済的にもリージナブルという、ワーケーションに総合的に魅力的な国です。
参照元:
A Nomad’s Dream: Spain’s Rise as the Best Remote Work Destination (IMGW.News)
Digital Nomad Index(Visa Guide)
Full Report: Global Digital Nomad 2024 (Global Citizen Solutions)
5G coverage reaches 96% of Spanish population in 2024 (RCR Wireless News )
What makes Spain better than other EU countries for remote work? (Consult Immigration)
スペインのノマドビザとは
2023年1月に施行されたスペインのスタートアップ法の一部としてデジタルノマドビザが導入されました。 スペインのデジタルノマドビザは、EU圏外の国民がスペインに居住し、リモートで働く機会を得ることを許可するビザです。
1. ビザの目的
スペインのデジタルノマドビザ導入の主な目的は、スペイン国外の企業で働くリモートワーカーを誘致することで、国際的な才能を誘致し、スタートアップ法を通じて外国投資を促進し、スペイン経済を活性化することです。同時に、コロナ禍による観光業の衰退への対処ともなります。
世界的なリモートワークの増加を背景に、現地の雇用市場に影響を与えることなく優秀な労働力の恩恵を受けられるよう支援し、スペインをグローバルなビジネス拠点として発展させることも目指しています。
そのため、スペインのデジタルノマドビザは「ワーケーション」と似た要素を持ちながら、より本格的なリモートワークと居住を目的としたビザとなっています。
2.ビザの対象と滞在期間
・対象者:EU圏外の国籍を持つITリモートワーカー
・滞在期間:最初は1年、そして居住許可書として3年の滞在許可書となります。さらに延長で、最長5年間滞在できます。5年後には永住権を申請できます。
3. ビザの要件
・リモートワーク:スペイン国外に拠点を置く企業とリモートワークの雇用契約またはフリーランス契約があること(申請日以前の3ヶ月以上前から働いていること、会社は一年以上事業していること)
・収入要件:スペインの最低賃金の2倍の月収が必要。2025年時点で月収2,763ユーロ (約44万3千円)
・収入源:スペイン国内の会社からの収入が20%を超えないこと
・スキル要件:大学の学位または3年以上の職歴を証明できること
・医療保険:スペイン全土をカバーする包括的な医療保険に加入が必要あり
・犯罪歴がないこと
参照元:
The Spanish Digital Nomad Visa (Innoinsure)
Digital Nomad Visa (スペイン領事館)

スペインでワーケーションの人気な場所
ノマドビザでのスペイン滞在は、公式観光サイトでもプロモートされています。(※4)
・カナリア諸島:大西洋に浮かぶ「常春の島」と呼ばれる、避暑・避寒地として有名な8つの島です。
・バレアレス諸島;西地中海に浮かぶ群島で、一番有名な島はマヨルカ島です。年間300日以上が晴れといわれ「地中海の楽園」と呼ばれてています。
・バレンシア州:スペイン東部にある自治州で、州都はバレンシア、スペイン第3の都市です。温暖な気候で、降水量が少ない地中海気候です。
・アンダルシア:スペイン南部の州で、州都のセビリアのほか、グラナダ、コルドバ、マラガなどが有名な都市です。「青い空と白い街」、「情熱のフラメンコ」、「闘牛」といったスペインのイメージが体感できる地方です。
・マドリード&バロセロナ:首都のマドリード、そしてカタルーニャ州の州都のバルセロナは、スペインらしい活気ある歴史・文化都市として人気です。
※4 出典 スペインでテレワークにおすすめの目的地(スペイン観光公式サイト)
スペインのリモートワーク普及状況
ノマドビザで人気となっているスペインですが、スペインのリモートワーク普及状況はまだ発展途上です。
Eurostatによると2023年のスペインのフルリモート率は7.1%で、ヨーロッパの平均の8.9%を下回り、27カ国中の14位となっています。トップはフィンランドで21.7%、続くアイルランドは21.4%です。(※5)
ハイブリッドを含むリモートワーカーの数は、2023年には前年比19.4%増加し、306万人の14.2%に達し、テレワークが増加傾向にあるものの、欧州平均22.2%を下回り、ヨーロッパで12位となっています。(※6)
「2025年グローバルワーキングアレンジメント調査」で、週に何日、終日フルタイムの在宅勤務が行われているかを調査したWFLリサーチによると、スペインは1.2日で、世界平均1.27日の中、ごく平均となっています。(※7)
この結果から見ると、スペイン国内ではリモートワーク普及自体は、まだ発展途上であることがわかります。
その理由は、スペインは伝統的に対面を好む仕事文化、職種的にリモートが難しい職業が多い、制度が始まって日が浅い(2020年9月)などの理由が挙げられています。
しかし、Capterraの調査によると、スペイン人の90%以上の従業員はリモートまたはハイブリッドでの勤務を希望しているとされ、普及率とのギャップの大きさが目立ちます。(※8)
これからの法整備やノマドビサの導入による意識改革でスペインでもリモートが普及していくことが考えられます。
※5 出典 Employed persons working from home as a percentage of the total employment, by sex, age and professional status (%) (eurostat)
※6 出典 Teleworking grows in Spain but remains below the European average
(Idealista news)
※7 出典:Working from Home in 2025: Five Key Facts (スタンフォード大学)
※8 出典 :Remote Work in Spain: Hesitance to Return to the Office(TYM)
スペインのリモートワーク制度
スペインでは初めてとなる在宅勤務に関する法令であるテレワーク法(Royal Decree-Law28/ 2020)は、2020年9月22日に可決されました。
キーポイントは4つあります。
・従業員の勤務時間の30%を超える場合に適用される法律で、自発的な契約となります。
・雇用者と従業員は労働条件を示した契約書面を取り交わす必要があります。(例えば、設備、経費、労働時間、リモートワークとそれ以外の時間配分や場所等)
・従業員の作業環境を整備する費用負担は、雇用主にあります。
・在宅勤務者に勤務時間外にデジタル接続を切断する権利があります。(デジタル切断)
費用負担とまた自発的な契約という面で、スペインのリモートワーク普及は思うように進んでいないと言われています。
参照:Telework Legislation (European Labour Authority)
まとめ
太陽の国スペインでのノマド生活、憧れる人も多いのではないでしょうか?
スペインはノマドビザで人気の一方で、国内でのリモート普及は進んでいないという独特の状況となっています。
スペインでは伝統を守りながら、ノマドビザを通じて新しいリモートワークのビジネスバブになることで、スペインの経済を活性化しようとする新しい試みが見られます。
日本でもノマドビザが発給され始めましたが、国の経済発展のためにリモートワークの活用を考えているスペインのノマドビザとは大きく違っています。スペインのこれからのリモートワークの動向が注目されます。
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