2026年1月29日
リモート経験者の半数が「定年後も在宅」を希望する理由
記事の調査概要
調査方法:インターネット調査
調査対象:20歳~65歳のテレワーク/リモートワークを経験したことがあるワーキングパーソン男女1,004名
調査期間:2025年8月26日〜8月29日
在宅志向が最も強い層とは
「リモートワークが世の中で一般化したら、どんな定年後の働き方をしたいか」。この問いに対し、フルリモート勤務者(n=170)の50.0%が「自宅でできる仕事で体力的負担を減らしたい」を選んだ。フル出社者(n=330)の42.1%と比べると、7.9ポイントの差がある。現在リモートワークを実践している人ほど、定年後も在宅での就労を望む傾向が浮かび上がった。
リモートワークを日常的に経験している層は、在宅勤務の利点と課題を肌で知っている。その上で、通勤負担の軽減、時間の柔軟性といったメリットを重視し、「定年後もこの働き方を続けたい」と考えているのではないか。
65歳以降も働く時代の選択肢
人生100年時代という言葉が定着し、年金支給が開始される65歳以降も働き続けることが珍しくなくなった。年金受給開始年齢の引き上げ議論、企業の定年延長や再雇用制度の拡充など、「働く高齢者」を前提とした社会制度の整備が進んでいる。内閣府の統計*¹によれば、65歳以上の就業者数は20年連続で増加しており、就業率も上昇傾向にある。
こうした中で問われるのは「働くかどうか」ではなく「どう働くか」だ。体力の衰えや健康上の制約を抱えながらも収入を得たい。家族との時間を大切にしながら社会とのつながりを保ちたい。こうした多様なニーズに応える選択肢として、リモートワークが注目されている。
テレリモ総研の調査(n=1,004)では、定年後に希望する働き方として「自宅でできる仕事で体力的負担を減らしたい」が42.5%で最多となった。次いで「週2〜3日だけ働く柔軟な勤務スタイルを希望する」が38.9%。前者は場所の、後者は時間の自由度を重視した回答である。
図1:定年後に希望する働き方TOP5
全体(n=1,004)/複数回答
出典:テレリモ総研調査(n=1,004)
「年金+少しの収入で無理なく働きたい」は24.1%で3位。フルタイムでの就労ではなく、年金を補完する程度の収入を得る働き方を志向する層が一定数存在することがわかる。
勤務形態別に見る定年後への希望
では、現在の勤務形態によって定年後の働き方への希望はどう異なるのか。フルリモート勤務者(n=170)とフル出社者(n=330)を比較すると、在宅志向の項目で顕著な差が見られた。
「自宅でできる仕事で体力的負担を減らしたい」はフルリモート層50.0%、フル出社層42.1%で7.9ポイント差。「趣味や特技を活かした在宅副業をしたい」はフルリモート層21.2%、フル出社層14.2%で7.0ポイント差。「会社に所属しながらも在宅で長く働き続けたい」はフルリモート層22.4%、フル出社層17.0%で5.4ポイント差となった。
図2:勤務形態別「在宅志向」の比較
フルリモート勤務(n=170)vs フル出社(n=330)
出典:テレリモ総研調査
在宅での就労を前提とした選択肢において、フルリモート層が軒並み高い数値を示している。一方で「週2〜3日だけ働く柔軟な勤務スタイルを希望する」はフルリモート層36.5%、フル出社層37.3%とほぼ同水準だった。勤務日数の柔軟性を求める志向は、現在の勤務形態に関わらず共通していると言える。
さらに、「年金+少しの収入で無理なく働きたい」の回答を見ると、フルリモート層28.2%、フル出社層26.1%で2.1ポイント差と、こちらも大きな開きはない。定年後の収入や勤務日数に関する志向は勤務形態による差が小さく、働く「場所」に関しては差が生じていることがわかる。
経験が志向を育むのか
このデータをどう解釈すべきだろうか。「リモートワーク経験者は定年後も在宅を望む」という傾向は明らかだが、その要因は何であろうか。
一つ目の仮説は「経験が志向を育む」という見方だ。リモートワークを日常的に実践する中で、通勤時間の削減や自宅環境での集中しやすさといった利点を実感する。その経験が「定年後もこの働き方を続けたい」という志向につながっている、という解釈である。
二つ目の仮説は「志向が選択を導く」という逆の見方だ。もともと在宅志向の強い人が、リモートワーク可能な職種や企業を選んでいる可能性がある。この場合、リモートワーク経験が志向を形成したのではなく、志向が先にあって勤務形態を選択した結果、現在フルリモートで働いているということになる。
年代別に見る在宅志向の差
年代別のデータからも、リモートワーク経験と在宅志向の関連が見えてくる。50代のフルリモート勤務者(38/204n)で「自宅で体力的負担を減らしたい」を選んだ割合は52.6%。60代のフルリモート勤務者(20/188n)では70.0%に達した。同年代のフル出社層と比べると、50代フル出社(73/204n)は42.5%、60代フル出社(74/188n)は33.8%であり、年齢が上がるほどフルリモート層と出社層の差が広がる傾向が見られる。
図3:年代×勤務形態別「自宅で体力的負担を減らしたい」選択率
50代・60代のフルリモート勤務者とフル出社者の比較
出典:テレリモ総研調査
※60〜65歳フルリモート層は回答者数が少ない(20/188n)ため参考値
60〜65歳フルリモート層は回答者数が少ない(20/188n)点には留意が必要だが、定年後が近づくにつれてリモートワーク経験者の在宅志向が強まる傾向は示唆される。体力的な衰えを実感し始める年代において、通勤負担のない働き方への評価が高まるのは自然なことかもしれない。
リモートワーク経験が在宅志向を育てたのか、在宅志向の人がリモートワークを選んだのか。その因果は本調査だけでは特定できない。ただ、年齢とともに差が広がる傾向を見ると、日々の働き方の経験が定年後への意識に影響を与えている面はあるのではないか。
65歳以降を見据えた働き方の選択
今回の調査結果は、企業と個人の双方に示唆を与える。
企業にとっては、シニア人材の活用戦略としてリモートワーク制度の整備が有効である可能性が見えてきた。定年延長や再雇用でシニア層を活用したいと考える企業は多いが、通勤負担や体力面での制約がハードルになることも少なくない。リモートワークを前提とした働き方を用意することで、経験豊富なシニア人材の活躍の場を広げられるのではないか。
個人にとっては、「今の働き方が定年後のキャリア観を形成する」という視点が重要だ。現在リモートワークを経験している人は、その利点を活かした65歳以降のキャリアを描きやすい。逆に、フル出社のみの経験しかない場合、定年後の選択肢が狭まる可能性もある。年代を問わず、早い段階からリモートワークを経験しておくことが、65歳以降のキャリアの幅を広げることにつながるかもしれない。
もちろん、すべての職種でリモートワークが可能なわけではない。対面での業務が不可欠な仕事も多く存在する。しかし、デジタル化の進展により、かつては出社が必須だった業務の一部がリモートで可能になっている領域は確実に広がっている。
「65歳以降も働くとしたら、どこで、どう働きたいか」。この問いに対する答えは、今の働き方の延長線上にあるのかもしれない。定年後のキャリアを見据えたとき、現在の勤務形態をどう評価するか。人生100年時代を生きる私たちにとって、そうした視点で自らの働き方を見直すことも有用なのではないだろうか。
*¹ 内閣府『令和6年版高齢社会白書』:https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2024/html/zenbun/s1_2_1.html
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