テレワーク・リモートワーク総合研究所

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記事の調査概要

調査方法:インターネット調査

調査対象:20歳〜65歳のテレワーク/リモートワークを経験したことがあるワーキングパーソン男女1,004名

調査期間:2025年8月26日〜8月29日

勤務形態で「介護対応力」に3倍の差

「介護離職」という言葉がある。親や家族の介護を理由に仕事を辞めざるを得なくなる状況を指す。総務省の調査によれば、介護・看護を理由とする離職者は年間約10万人で推移しており*1、働き盛り世代のキャリア中断は本人にとっても企業にとっても大きな損失となっている。

こうした中、勤務形態の違いが介護との両立にどう影響するのか。テレリモ総研が実施した調査(n=1,004)で、興味深い傾向が明らかになった。「現在の勤務形態は、介護の必要が生じた際に両立は可能か」という問いに対し、フルリモート勤務者(n=170)の29.4%が「介護のための時間を確保しやすい」と回答している。一方、フル出社者(n=330)で同様に回答したのは9.4%にとどまった。

両者の差は3.1倍。勤務形態という一つの変数が、介護との両立可能性に対する認識をここまで分けている。この差は偶然だろうか。データを詳しく見ていく。

「いつか来る介護」に備える働き方

日本社会の高齢化は加速している。65歳以上の人口比率は29%を超え*2、団塊世代が後期高齢者となる時期を迎えている。40代、50代のビジネスパーソンにとって、親の介護は「いつか来るかもしれない」ではなく「いつ来てもおかしくない」現実となりつつある。

介護の難しさは、その突発性にある。親が転倒して骨折する、認知症の症状が急に進む、といった事態は予測できない。そのとき、仕事との両立ができるかどうかは、日常の働き方に大きく依存する。毎日決まった時間にオフィスへ出勤する働き方と、自宅やその他の場所で柔軟に働ける働き方では、急な対応の余地が異なるのは想像に難くない。

本調査では、フルリモートから毎週1〜4日出社、フル出社まで6つの勤務形態について、介護との両立に関する認識を複数選択で聞いた。回答者は全体で1,004名。勤務形態別の内訳は、フルリモート170名、週1出社128名、週2出社106名、週3出社133名、週4出社137名、フル出社330名となっている。

リモート頻度が高いほど時間を確保しやすい

調査結果を勤務形態別に見ると、明確な傾向が浮かび上がる。「介護のための時間を確保しやすい」と回答した割合は、フルリモート勤務者(n=170)で29.4%、週1出社(n=128)で27.3%、週2出社(n=106)で26.4%と、リモート頻度が高い層で高水準を示した。これに対し、週3出社(n=133)では20.3%、週4出社(n=137)では18.2%、フル出社(n=330)では9.4%と、出社頻度が上がるにつれて割合は低下していく。

Q.現在の勤務形態(フルリモート、フル出社など)は、介護の必要が生じた際に、両立は可能ですか?

【図1】勤務形態別「介護のための時間を確保しやすい」回答率
フルリモート(n=170)
29.4%
週1出社(n=128)
27.3%
週2出社(n=106)
26.4%
週3出社(n=133)
20.3%
週4出社(n=137)
18.2%
フル出社(n=330)
9.4%
出典:テレリモ総研調査(n=1,004)

「急な介護対応にも柔軟に対応できる」という項目でも同様の傾向が見られる。フルリモート勤務者で22.9%、週1出社で27.3%、週2出社で23.6%が肯定的に回答した。一方、フル出社では11.5%にとどまっている。週1出社が最も高い数値を示している点は注目に値する。完全なリモートワークよりも、週に1日程度の出社を組み合わせた働き方のほうが、急な対応への安心感につながっている可能性がある。

ここまでのデータを整理すると、3つのポイントが見えてくる。第一に、リモート頻度が高いほど「時間確保しやすい」と感じる割合が高い。第二に、その傾向は介護が現実化する40代以上で顕著になる。第三に、フル出社と週1〜2回出社の間に大きな断層がある。フルリモートでなくとも、週に数日のリモート勤務ができる環境が、介護対応の余地を広げている可能性がある。

40代フルリモートでは42.9%が「確保しやすい」

年代別のクロス集計を見ると、傾向はさらに鮮明になる。親の介護が現実味を帯び始める40代に絞った場合、フルリモート勤務者(n=42)の42.9%が「介護のための時間を確保しやすい」と回答した。同年代のフル出社者(n=58)では3.4%。その差は実に12.6倍に達している。

【図2】40代の勤務形態別「介護のための時間を確保しやすい」回答率
12.6倍の差
フルリモート(n=42)
42.9%
フル出社(n=58)
3.4%
出典:テレリモ総研調査(40代フルリモートn=42、40代フル出社n=58)

40代は、子育てと介護が重なる「ダブルケア」のリスクも高まる世代だ。キャリアの面でも中核を担う時期であり、介護を理由に離職すれば、その後のキャリア再構築は容易ではない。この世代でフルリモート勤務者の4割以上が「時間確保しやすい」と認識しているのは、リモートワークが介護との両立を支える一つの手段になり得ることを示している。

50代以上でも傾向は同様だ。50代フルリモート勤務者(n=38)では26.3%が「介護時間を確保しやすい」と回答し、同年代フル出社(n=73)の9.6%を上回っている。60代前半のフルリモート勤務者(n=20)に至っては45.0%が肯定的に回答しており、介護が目前に迫る世代ほど、リモートワークの価値を実感している傾向がうかがえる。

フル出社でも「両立できる」層の存在

ただし、フル出社だから両立できないと断じるのは早計だ。フル出社者(n=330)の中にも、12.1%が「職場の理解が得られていると感じる」と回答している。週2出社(n=106)の23.6%や週3出社(n=133)の21.8%には及ばないものの、一定数は職場環境によって両立の可能性を感じている。

【図3】フル出社者(n=330)の介護両立に関する回答分布
ポジティブ項目
ネガティブ項目
時間確保しやすい
9.4%
急な対応可能
11.5%
職場の理解あり
12.1%
ストレス感じる
18.5%
調整が困難
19.7%
離職を検討
4.8%
出典:テレリモ総研調査(フル出社n=330)

勤務形態はあくまで一つの要因に過ぎない。介護休暇や時短勤務の制度が整備されているか、上司や同僚が介護に対して理解を示すか、業務の属人化が進んでいないか——こうした職場環境全体が、両立の可能性を左右する。リモートワークができない業種・職種も存在する以上、勤務形態だけで語れない現実もある。

とはいえ、データが示す傾向は明らかだ。フル出社者で「介護のために仕事を調整するのが難しい」と回答した割合は19.7%。フルリモート勤務者の11.8%と比べると7.9ポイント高い。「離職や転職を考えたことがある」はフル出社で4.8%、フルリモートで4.1%と差は小さいものの、「調整の難しさ」を感じている層が多いフル出社では、将来的に離職リスクが顕在化する可能性も否定できない。

「介護が来る前」の働き方選択

介護は、始まってから対応を考えても遅いことが多い。親が元気なうちは「まだ先の話」と思いがちだが、いざ始まると日常は一変する。そのとき、働き方の選択肢があるかどうかが、仕事を続けられるかどうかを分ける。

本調査のデータは、リモートワークの選択肢を持つことが、将来の介護対応力を高める可能性を示唆している。フルリモートでなくとも、週に1〜2日のリモート勤務ができる環境であれば、介護が必要になったときに調整の余地が生まれる。逆に、フル出社が前提の環境では、その余地が狭まる。

企業側の視点で言えば、従業員の介護離職は人材流出であり、採用・育成コストの損失でもある。リモートワーク制度の整備は、従業員の働きやすさだけでなく、人材定着策としても機能し得る。介護離職リスクの高い40代、50代の従業員が多い企業ほど、検討の価値があるのではないか。

個人の視点で言えば、今の勤務形態で急な介護対応が可能かどうか、一度点検してみる価値がある。転職や異動の際に、リモートワークの可否を判断軸に加えることも選択肢だ。介護が始まってから慌てるのではなく、「介護が来る前」の段階で働き方を選んでおく——それが、将来の「両立できる自分」への備えになる。


【出典・参考資料】
*1 総務省統計局「令和4年就業構造基本調査」(2023年7月公表)
URL:https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2022/index.html

*2 内閣府「令和6年版高齢社会白書」(令和5年10月1日現在:29.1%)
URL:https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2024/html/zenbun/s1_1_1.html

影山綾子

影山綾子

\記事のエビデンスとしてイラストやグラフを転載OK/
・ライター、メディア、新聞社の強い味方
・在宅勤務に関する情報発信メディア:テレワークリモートワーク総合研究所
・年4回の市場調査
・ご要望に合わせて設問の用意可能
・運営:株式会社LASSIC(ラシック)
・イラスト:ねじまきデザイン製作所

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