LASSIC Media らしくメディア

2020.10.05 リモートワークコラム

テレワークで問われる「ローコンテクストコミュニケーション」への対応力


高まる平常時のテレワーク・リモートワーク活用

 ウィズコロナ時代に突入し、企業のBCP(Business Continuity Plan 事業継続計画)対策が急務となっています。

BCPとは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。

通勤ラッシュや人混みを回避し、在宅勤務も可能となるテレワーク・リモートワークは、有効策の一つとしてその導入が推奨されています。

テレワーク・リモートワークという働き方を選択肢に

 都内では新型コロナ感染拡大の警戒レベルが3に引き下げられ、経済活動の正常化に向けた動きも加速するものと思われます。その結果、外出自粛の解除とともに増加したオフィスへ出社する人々の割合がさらに増えることが予想されます。

しかし、秋冬の到来とともに流行する季節性インフルエンザとの「ツインデミック」が懸念され、最悪の場合、再び緊急事態宣言が発令される可能性もゼロではありません。

引き続き、会社や従業員を守る手段としてテレワーク・リモートワークという働き方が必要となるのではないでしょうか。

なぜテレワーク・リモートワークは上手くいかないのか?

 しかしその一方で、導入したものの思うように上手くいかないと頭を悩ませる経営者の声も聞かれます。

企業の数だけ抱える課題も様々です。

 

「ビデオ会議やビジネスチャットなど、テレワーク・リモートワークの円滑化を助けるITツールに対する社内リテラシー」
「従業員の評価方法」
「社内セキュリティ」
「従業員ごとの仕事環境」

 

このほかにも、挙げ始めれば枚挙にいとまがありません。

せっかく導入しても上手く機能しないのでは組織にとって大きな痛手です。オフィス勤務に回帰する動きが起きるのも容易に想像できます。

では、これらの課題を解決することができれば上手くいくのでしょうか。何か根本的な課題が隠れているのではないでしょうか。

テレワーク・リモートワークには「ローコンテクスト文化」が有利?!

 テレワーク・リモートワークにつまずく企業が決して少数派ではない理由は、日本人が培ってきた「ハイコンテクスト文化」にあるのかもしれません。

ハイコンテクストとは、コミュニケーションや意思疎通を図るときに、前提となる文脈(言語や価値観、考え方など)が非常に近い状態のことを指します。 民族性、経済力、文化度などが近い人同士が、コミュニケーションの際に互いに相手の意図を察し合うことで、「以心伝心」でなんとなく通じてしまう環境や状況を言います。

しばしば日本は、このハイコンテクスト文化を代表する国として挙げられ、ローコンテクスト文化といわれる欧米諸国と対比されます。

これは、アメリカの文化人類学者であるエドワード.T.ホールが提唱した識別法で、ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化ではコミュニケーションに対する考え方や求められるスキルが異なります。具体的な比較例を見てみましょう

 

ハイコンテクスト文化 (聞き手の能力を期待する)

・直接的表現より単純表現や凝った描写を好む
・あいまいな表現を好む
・多くを離さない
・論理的飛躍が許される
・疑義応答の直接性を重要視しない

 

ローコンテクスト文化 (話し手の能力を重要と考える)

・直接的・明示的で解りやすい表現を好む
・言語に対し高い価値と積極的な姿勢を示す
・単純でシンプルな理論を好む
・寡黙であることを評価しない
・論理的飛躍を好まない
・質疑応答では直接的委答える

 

すでにお気づきの方がいらっしゃるかもしれませんが、ローコンテクスト文化の特徴として挙げられているものはテレワーク・リモートワークのコミュニケーションにおいて重宝されるものです。

察し合うのではなく、「言葉にしあう」

 物理的に離れた環境では、互いに相手の意図を「察し合う」コミュニケーションは実現しにくくなります。そのため、話し手と聞き手の齟齬をなくすには、自身の意図を分かりやすく言語化する能力が重要です。

上司は「これぐらい言わなくても分かるだろう」という前提を排除し、指示内容をしっかり言葉で伝え、部下は「こういうことだろう」と自己判断するのではなく、指示された内容の理解にズレがないか言葉にして確認する。

つまり、「ローコンテクスト」なやり取りができているかどうかが、テレワーク・リモートワークの成功を大きく左右するのではないでしょうか。

ローコンテクストコミュニケーションの前提は「言葉にしないと伝わらない」

 これまで当たり前に行っていたコミュニケーション方法をいきなり変えるというのはハードルの高いものです。

例えば、これまで口頭で伝えていたことをメールやビジネスチャットなど文字に起こして伝えるようにしてみるだけでも効果的です。

書いた文章を読み返してみて、伝えたいことがきちんと言語化されているか確認してみましょう。無意識のうちに省略していた内容に気が付くかもしれません。

ローコンテクストなやり取りでは、聞き手に理解をゆだねるのではなく、コミュニケーションは話し手の伝え方によって決まります。

「同じ会社だから」「同じ職種だから」「同じ役職だから」相手も共通の認識だろう、という発想を変え、私と相手は違う人間で言葉にしなければ伝わらないという前提でコミュニケーションを図ることを意識する。それだけでもテレワーク・リモートワークがぐっと快適に、円滑に進められそうです。

テレワーク・リモートワークが上手くいかないと感じている方は、ローコンテクストコミュニケーションに着目してみてはいかがでしょうか。


View