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2014.03.25 事例紹介

機械対話に基づく感情遷移推定と「症状処方」への応用を発表

【LASSIC感情医工学研究所レポート】Vol.1

 近年、気分状態に不安を抱える患者が増加しており、こころを良好な状態に導くメンタルヘルスケアが注目されています。

 精神科医の問診技術を知識化して機械対話のアルゴリズムに実装し、機械との対話履歴に基づいて感情の遷移状態を分析するモバイルアプリケーションを開発しました。

 本実験では、スマートフォンを用いた「症状処方」に適用し、健康的な喫煙→減煙→禁煙に向けた生活支援システムに関する知見を得たので報告いたします。

 

 

感情分析型対話システムの開発

システムの特徴

 ユーザの生体情報や対話内容を多角的に採取して感情値を算出し、その履歴を軟判定することによって感情遷移を推定する技術を開発。特に、精神科医が診断に用いる問診技術を知識化して対話アルゴリズムに組み込んでいるので、ユーザの感情推定と自己認知に適した応答メッセージを呈示することを特徴としている。気分の落ち込みや不安などの感情に関する問題を早期発見する効用が期待されています。

システムの構成

 ネットワークシステムの構成を[図1]に、スマートフォンの対話画面例を[図2]に示します。

[図1]ネットワークシステムの構成

[図2]精神科医の対話アルゴリズムに基づく機械対話例

 喫煙時間内に対話するためのWebアプリケーションとして開発したため、AndroidやiPhone、PCなどで利用できます。また、一回の喫煙(約5分間)で終了するよう3~4往復の対話としています。

 

 

「症状処方」への応用

 「症状処方」は戦略的な心理療法であり、パラドクス的な状況を別のパラドクスを「処方」することで組み替える手法です。健康的な喫煙を勧めるという逆説的介入(症状処方)のモニタ実験を行い、アンケートやSTAIなども併用して効果測定と分析を行いました。被験(喫煙)者は12人、実験期間は1カ月。本システムによる感情値変化例を[図3]に示します。

[図3]「症状処方」による感情値変化の例

 禁煙志向のない人は本システムを利用することによって気分状態が低下しており、減煙効果が少ないと考えられます。これは、システム利用が煩雑であるという主観的評価が裏付けているものです。一方、禁煙志向のある人は気分状態が維持されており、減煙効果が期待できます。

 


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