【前編】ソニックガーデン倉貫社長と考える「リモートワークで会社は、社員はどう変わる?」
「らしくの実現をサポート」するLASSIC(ラシック)だから、自分たちの「らしく」の可能性も追求したい―。そんな想いから、さまざまな「らしく」を研究し、レポートをお届けしたいと思います。
第一弾のテーマは、今もっとも注目されている「“らしく”ワークスタイル」のひとつ、「リモートワーク」。
今回は、数年前からリモートワークに取り組み、地方在住の方はもちろん、都内に住むメンバーもリモートワークを効果的に取り入れ、まさに「“らしく”ワークスタイル」を実現されている株式会社ソニックガーデンの新ワークプレイスにお邪魔して、代表の倉貫さんとLASSIC若山の社長対談を通して、「“らしく”ワークスタイル」の可能性を探ってきました。
プロフィール
倉貫 義人(くらぬき よしひと) 株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長
TIS株式会社にてプログラマやマネージャとして経験を積んだのち、2009年に同社の第1号社内ベンチャーカンパニーとして「SonicGarden」を立ち上げる。「納品のない受託開発」という新しいビジネスモデルを展開し注目を集める。著書に『「納品」をなくせばうまくいく』『リモートチームでうまくいく』など。「心はプログラマ、仕事は経営者」がモットー。
若山 幸司(わかやま こうじ) 株式会社LASSIC 代表取締役社長
株式会社インテリジェンスにてIT派遣事業、人材紹介事業責任者を歴任したのち、2009年に株式会社LASSIC(ラシック)代表取締役社長に就任。「地域とともに歩むビジネス」に人生を賭けて挑む。
聞き手:八田 亜由子(はった あゆこ)
株式会社LASSIC IoEソリューショングループ所属。
個人の「自分らしさ」を大切にした生き方と持続的な社会を両立するための手段として、リモートワークに興味を持ち、研究中。倉貫さん主催のリモートワーク普及に向けたコミュニティ「リモートワークジャーニー」にも参画中。
-今回の対談が初顔合わせのお二人ですが、若山さんは倉貫さんのことをご存じだったんですよね?
若山 ソニックガーデンさんの噂は4年位前からお聞きしていたんですが、その時はあまり“リモートワーク”というイメージではなかったですよね?
倉貫 そうですね。その頃はまだそんなにやっていなかったです。
若山 どちらかと言うと「納品のない受託開発」のビジネスモデルなどについて勉強させていただいていたんです。が、そうこうしているうちにすごくリモートワークで盛り上がっていらして。あれあれ、と(笑)。
今日は実際にどうやってリモートワークをされているのかなど、リアルに聞かせていただきたいなと思っていますので、よろしくお願いします。
-そもそもなぜLASSICは、「リモートワーク」の話しを聞きたいのでしょうか?
若山 我々は鳥取を本社として地方にもいくつか拠点がありまして、拠点間をまたぐリモートプロジェクトで受託開発を行っていますが、営業の際に「リモートで開発したい」というと9割のお客さまに難色を示されるんですね。常駐して欲しいと。リモートワークは、まだまだマイナーだなと感じています。
倉貫 そうですね。
若山 しかし、今後の社会環境を考えていくとリモートワークなどの取り組みは広がっていった方がいいんじゃないかと考えていて、ノウハウのある会社さんと一緒に勉強させていただきながら、社会に対して情報発信していきたい…という趣旨の企画です。
倉貫 なるほど。

変化する環境に合わせたワークプレイス
-「オフィスを捨てました」ということがネットで話題になっていますね。“脱物理オフィス”おめでとうございます今回は“オフィス”ではなく、“ワークプレイス”というところにこだわりがあるのですか?
倉貫 ワークプレイスは3つありますが、本社・支社といった考え方ではありません。
既存の固定のオフィスといった概念ではなく、「働く場所の一つ」としてワークプレイスと呼んでいます。
若山 こちらは住居用のマンションですよね?ワークプレイスにもいろいろな形式があり得ると思うのですが、マンションタイプに決められたのはどんな理由があるんですか?
倉貫 まず、リモートのミーティングの時混線してしまうので「部屋」が欲しいなと。
オフィスを借りてパーティションをつけてもいいんですけど、またどうせすぐ引っ越しするのもわかっているのに、設営コストをかけるのはもったいない。
じゃあ最初から部屋が分かれているのがいいな、となって住居型に行きつきました。
住居をワークプレイスにして困ることがあるか?と考えたら特に困ることがなかったので。
-引っ越しすることを前提に考えられているんですね
倉貫 もしかしたら1年くらいで出ていくかもしれません。転々としようと思ってます。
前回のオフィスが3年更新で、契約更新するころには人数が倍になって手狭になると踏んで大きめのところを借りたのですが、リモートワークの社員が増えて当時よりも会社に来る社員は減ってしまったということがあって。3年前はこんな状況を想定できずに大きなオフィスを借りてしまったということが失敗だったので、今から3年後を見越してファシリティを決め切るのは愚かだと思い、なるべく身軽にしようと思っています。
だから登記もここじゃないんですよ。そうすると今後ワークプレイスを変更する際も登記の変更がいらないし、移転費用も掛からない。面倒くさいことがない。
若山 フレキシブルにできますもんね。
倉貫 そうなんです。「移転しやすくする」というのもコンセプトなんです。
どんどん変わっていくのに合わせて変えようと。例えば、家具も買っちゃうと引っ越しが面倒くさくなるので、新しい家具はレンタルなんです。
若山 ヤドカリ的な。
倉貫 そうそう。「基本的に資産を持たない」というのも大事なことで。なるべく身軽に。

-自由が丘(東京都)以外に岡山と町田(東京都)にもワークプレイスを持たれましたが、今後リモートワークで働く人が増えた時にワークプレイスも増えていくのですか?
若山 地方でオフィスを作る基準は何ですか?
倉貫 あくまで本人基準ですね。本人が欲しいと言えば。
今回の岡山は、お子さんが大きくなって家で仕事がしづらくなってきたので家から徒歩3分くらいのところに部屋を借りた、というだけなんです。お子さんがさらに大きくなったら家が静かになるので、部屋を引き払って家に戻るかもしれない。夏休み期間だけ部屋を借りる、なんてパターンも今後は考えています。
生産性を上げるためならフレキシブルに対応すればいいという発想です。
若山 生産性を高めるために最適なところは?、ということをゼロベースで考えた結果がたまたま今の形なのですね。
倉貫 はい。別に「リモートワークがしたい」わけではなく、生産性を上げたいだけなので。
若山 手段の一つとして、ということですよね。
倉貫 そうなんです。リモートワークの会社にしようというわけではなく、実は結果としてリモートワークになっているということなんです。

-結果として、という点に関連して、今回のワークプレイスの選定について倉貫社長は結果だけ伝えられたという話も特徴的ですよね。
倉貫 岡山・町田については後から聞いたし、自由が丘もほぼ決まってから「一応見にくる?」と聞かれたくらいです。うちの会社は決裁のない会社なので、決まったのを聞いて、「へぇー、いいね」って言う(笑)。
実際、まだ岡山と町田は行ってないんです。今度広島に行く用事があるので、その時に岡山のワークプレイスに前泊しようかと思ってます。
若山 泊まれるのはいいですね。LASSICも岡山にオフィスがあるのですが、普通のオフィスなので、宿泊はホテルを取らないといけない。
倉貫 うちは普通の部屋なので(笑)。
若山 以前、鳥取で研修事業のために古民家を借りていたことがありますが、それを開発オフィスにするという発想はなかったですね。まあセキュリティの問題もありましたが。
しかし発想は非常に合理的ですよね。
倉貫 スケールアップの観点でも合理的なんです。スケールアップするのに、昔の発想は「大きなサーバを買いましょう」だったけれど、クラウドが出てから「サーバをいっぱい立てましょう」という負荷分散になったんです。どっちがスケールしやすいかといえば負荷分散する方がよい。
若山 確かにそうですね。それに、これから東京の宿泊施設はますます予約が取りづらくなるので、きれいなワークスペースで地方の社員向けの宿泊施設も兼ねられれば、社員も喜ぶし経費も削減できるというわけですね。うちもこういうところに変えようかな。
-宿泊できる住居型ワークプレイスなら、若山さんの引退後の夢もさらに実行しやすくなりますね?(笑)
若山 確かに!LASSICの拠点を車でぐるぐる回りたいと思ってるんですよ。邪魔して回る(笑)。
倉貫 いいですね。「社長また来たよ~」とか言われちゃう(笑)。
若山 そうそう(笑)。

場所にとらわれない、ただし自律性が求められる働き方
-ワークプレイスを活用した働き方についても伺ってみたいと思います。
若山 東京だとワークプレイスに出勤するのはどのくらいの人数がいらっしゃるのですか?
倉貫 リモートワークを禁止している、「弟子」と呼ばれる社員が3人います。それ以外は来たり来なかったりで、多い日で7~8人くらいですかね。宴会するぞ、と言うと来る、とかそういう感じです。
若山 東京近郊の人が全員出社してきても仕事はできる、くらいの広さですよね?
倉貫 そうですね。でも混んでたらあえて来る必要はないので(笑)。
「今日人いっぱいいる?」って聞いて、混んでたら来ない。雨降ってても来ないですし(笑)。
若山 前提条件として、プロ意識やかなりの自律性が求められますね。
倉貫 ええ、プロ意識は必要だと思います。
若山 最高のパフォーマンスを出すためには、家でやった方がいいか?ワークプレイスに来た方がいいか?を自分の責任でもって自分で決めるわけですね。
自分で決められようになるのは何か基準があるのですか?
倉貫 キャリアパス上、「弟子」と「一人前」というのがありまして、「弟子」の間はリモートワーク禁止です。
弟子から一人前になるのは、「一軍」と呼ばれているチームが「こいつはもう一人前でいいな」と認めたら一人前。
若山 それは、「早く弟子から一人前になりたい」という欲求から成長が早まりそうですね。
倉貫 めちゃくちゃ早いと思いますよ。
あとうちの会社だと雑用もないので。ワークスペースの掃除等もアウトソースしたりして、お金で解決できるところはお金で解決しています。そんなことやるより、その分早く腕を磨いた方がいいと思ってるので。
-弟子から一人前の移行トレーニングのような取り組みはあるのでしょうか?
倉貫 今年から、三年目の「弟子」は「兄弟子」というキャリアパスを作ったんです。やったことのないリモートワークの練習をするにはどうしたらよいかと考えて、「兄弟子」の部屋に「一人前」が通ってもらう形で、「兄弟子」は“リモートワークなんだけどちゃんと面倒を見てくれる人が近くにいる”という状態を作りました。
それも、「兄弟子」のメンバーからの発案なんです。渋谷のオフィスから自由が丘にワークプレイスを移転することになって、家から遠くなるので引っ越す、と。で、どうせ引っ越すなら、そういう形式でやってみたいと本人たちで話し合って持ってきました。
-資産を持たない形だからこその“お試し”ですね。
倉貫 そうですね。やってみて、うまくいかなかったらまたこちらのワークプレイスに戻るなり、別の形にすればいいと思ってます。

(記事の内容は、2016年6月現在のものです。)
(撮影:岡安啓人)
後編はこちらから
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